酒と仕事と兄貴と私

チャララ〜ンラ〜ララ〜〜〜ラ〜〜〜

夜中の12時に鳴り響くケータイ。
その着信メロディは身内からかかってきたときのみに鳴るものでした。
出なくても誰からかかってきたのかはすぐに分かります。
ディスプレイに出るとか出ないとかの問題ではなく、

ヤツしかいねぇ。

哀れ私の嫌な予感は見事ぶち当たりました。


私「も……もしもし?」
??『………………もっしも〜し?』

酔っ払いが一匹。

私「なにしてんのお兄ちゃん!!」


そう、その正体は仕事の用事で二週間ほど前から我が家に帰ってきていた兄でした。
しかしながらこの兄、その日はもう家に帰ってこない予定だったのです。
むしろもう帰ってこない予定だったのです。
言ってみればこちらでの用事が終わり、仕事が終わったら直接自宅へ帰る予定だったのです。
それをその日の朝母から聞いた私は幸せいっぱいでした。
なぜなら、もう酔っ払いに説教されなくてすむからです。

それなのに。

『あのですね〜、ちょぉーっと頼みたいことがあるんですケド……』
「は? 頼みたいこと? なに?」
『えーっとねぇ……ほんとは今日自宅に帰るつもりだったんですケド……』
「うん聞いてる」
『ちょぉ〜〜〜〜〜〜と、お酒、飲みすぎちゃったみたいで……』
「ちょっとぉ?」

どう聞いても酔っ払いきった声とセリフですけどねあんた。

『今日もっかいそっちに帰りたいから……鍵、開けといてくれません?』
テメェそれが夜中の12時に妹にかける社会人8年目の兄貴のセリフかいコラァ!!!!もちろんいいよ」

なんて素晴らしい妹でしょう。
涙すら出てきます。

酔っ払い兄貴との会話を終え、ウッカリ忘れるわけにもいかないのですぐさま鍵を開けました。
しかしながら鍵を開けた状態で寝るのはさすがに怖かったので、兄が帰ってくるまでは起きていようと決意。
実はこうして電話がかかってくるのは初めてではなかったので、30分もすれば帰ってくるのは知っていました。



が、しかし。



帰ってきたのは電話から一時間後。
すでに午前一時を回っていました。

前日午前四時まで友人とメッセをしていた私には絶対的に睡眠時間が足りませんでした。
なので、兄が鍵をかける音を聞いてすぐさまパソコンの電源を切り、寝に入りました。



が、しかし。



ココココンッココココンッコンコンッ


この無意味にリズミカルなノック…………間違いありません、ヤツです。
ノックされた扉を見つめているとガチャリと開き、ヤツはヤツ独特の絶妙な『間』で現れました。
そして一言。
兄「お前まだ起きてたの?」


私「誰のせいだゴルァ!!!!!!」
↑さすがに菩薩のような私でも壮絶なツッコミ


兄「え? あぁわりーわりー。んでお前、もう寝るの?」
私「ソレその一言前で『まだ起きてたの?』とか言った人間が吐いていいセリフじゃねぇしうん、もうそろそろ寝る」
兄「えーつまんねーなー」

そう言いながらわが部屋に侵入。

兄「語ろうぜ?」

私「お断りです(にっこり)」



兄「……………………」
私「……………………」
兄「……………………」
私「……………………」
兄「………………それでな(どっこいせ)」←座るモード
私「まてまてまてまてまてまて!!」

頑張れ私!
こいつを座らせたら安眠はない!!!

私「とりあえず座るな! 立ち上がれ! そして扉を開けて出て行くように!」
兄「まぁまぁ。まぁまぁまぁまぁ。まぁまぁまぁまぁまぁまぁまぁまぁ(どっこいせ)」

!!?(>□<)
この男、ドサクサにまぎれて座りやがりました!

兄「まぁお前も来年大学三年生になるってことで、そろそろ、アレだろ? 就職とか考え出さないといけない時期だろ?」

!!!!?(>□<)
この男、ドサクサにまぎれて説教始めやがりました!

兄「…………………………っておれこの間もそんなこと語ってた気がする……。…………ま、いっか」

!!!!!!!!!!?(>□<)
この男、酒に飲まれて自分が説教した記憶を失いやがりました!!

兄「それでな、おれも社会人になって気づいたんだよ。学生っつーのはな、ほんと楽。そりゃ勉強が好きか嫌いかって問題はあるけどさぁ、責任とか全然ねーもん。赤点とろーがサボろーがやるのは全部自分で返ってくんのも全部自分だろ? 人に対して責任なんて全然ねーじゃん。先生の言うこときーて、机に向かってべんきょーして、頑張るのも頑張らないのも自分のせーでさ、後悔するもしないも自分のせー。だろ? おれ今ちょっと昇格するのに勉強してんだけどさ、仕事なんかしてるよりほんと全然楽でさ。体調がいーこといーこと。おかげで二週間、これでもかってほど酒飲んだね。ひたすら飲んだ。飲み続けた。こんな飲んだの就職してから初めてってぐらい飲んだ。でも大丈夫だろ? つまりそれぐらい楽なんだよ、学生っつーのは。分かる?」

私「へぇ」
兄「……………………お前人の話聞いてんの?」
私「何を言うの。こんなに一生懸命目を見開いて聞いてあげてるじゃない」

兄「……ふむ。まぁ、そんな楽な学生は将来どーしたいのかな? 就職とか決まってる? 行きたい方向とかなりたいものとか具体的にあんの? っていうかそういう目的もなく大学行ってもどーにもなんないと思うけどねおれは。修士課程とか取らないの? あるだろ、院だよ院。将来のことなにも考えずにぼーーーーーーーーーっとすごしてたって学費ムダなだけだぜ? だから興味のある分野の勉強をしてこそのうんぬんかんぬんこれからの人生設計をどーしたこーした将来への目的をあーだこーだ」




延々暗黒の40分経過




兄「……じゃーおれそろそろ寝るわ。おやすみ」
私「あぁ……おやすみ……(疲労困憊)」
やっと立ち上がった兄を強制的に巣(隣室)へたたき出します。
そのままドアのすぐ近くにある電気のスイッチを切りベッドへもぐりこみました。


約一分後


ココココンッココココンッコンコンッ


この無意味にリズミカルなノック…………まさか……ま、まさかぁ!


兄「あれ、もー寝ちゃったの?」
なぜ来る
兄「なんで電気消してんの?」
なぜつける
兄「なーなー、そんでさぁ、つまりおれが何を言いたかったのかといえばだなぁ」
なぜ終わった話をむしかえすぅぅううぅう!!!!?



延々限界の20分経過



就寝時間は気持ちよく午前二時を回っていました。
なぜ私はこうも兄弟にからまれるのでしょうか。

きっと家族一優しい心の持ち主だからです。

否定などさせません。




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