恐怖・バケツ女の怪

先日、私の通う大学で、学園祭がありました。
私の入っているサークルではわたがしと無料喫茶をやったのですが、
無料喫茶では、食器をバケツに入れて、溜まったら洗いに行く、と言う方法をとっていました。
事件はバケツが足りなくなる所からはじまります。
元々三つあったのですが、
一つはわたあめの方に行き
(ベタつくので手を洗う用に設置)
一つはお客さんが残した飲み物を入れるゴミバケツとなり
そして一つは食器用。
食器を洗いに行く時はバケツごと持って行くので、
洗いに行っている間、バケツがなくなってしまうのです。
そんなわけで、どうしてももう一つバケツがいることになりました。

「買ってくるか」
「どこに売ってる」
「ウチの近所じゃ88円」
「っていうか家にない?」

との会話が交わされた結果、私の家にあるバケツを持っていく事に決定しました。


そして帰宅。

「おかーさん、明日バケツ持ってくことになったから出しといてねー」
「バケツ? バケツなんて何に使うの?」
「洗う食器入れるのに使うの」
「……ふぅん。でも自転車のカゴに入るかしらねぇ」
「なんとかなるんじゃない?」
「それにしてもバケツなんて女学生の持ち物じゃないわよねぇ



い、言わないで…………。
ちなみにバケツ、真っ赤です☆
アラステキ。
………………
………………嘘です。
撃沈され、眠りにつきました。
ってか女学生って…………。


翌朝。
ステキに雨。

「雨だ……」
「あんた、バケツどうするの?」
「え、そりゃあ……持ってくけどさぁ……」
「大変よぉこんな雨じゃ」
「でも持ってかないともっと大変なことが起こるから……」
「そうねぇでも…………あ、そうだ!!」
母は何かを思いついたようです。





「バケツかぶって行きなさい!」





…………
…………
「はぁ?」
「そうそう、それがいいって!!」
「ちょっと待ってよー……」
私が母の顔を見ると
母はからかって面白がっている、という表情はしていませんでした。
心から心配している顔をしていました。
始末に悪すぎます。
むげに断れません。
断ったらこっちが悪人です。
カンベンです。



「ちょっと待ってよ、そんな恥ずかしいことできないって」
「何が恥ずかしいの、雨なんだからいいじゃない」
「(何がいいんだよ)そんな事したらもう外歩けないよ」
「いいじゃない、誰も覚えてやしないわよ」
「(私が覚えてんじゃん)どっちにしろヤだよ」
「どうして、絶対いいと思うのに」
ちくしょう、なかなか分かってくれません。


「じゃあお母さん」
私は最後の説得を試みました。


「向こうから真っ赤なバケツかぶってチャリンコ乗った人来たらどうする?」
「そりゃ避けるわよ(サラリ)」







そっっ………………












即答ッスか!!!?












一瞬のためらいもありませんでした。
ほんの少しの迷いも見受けられませんでした。
さも当然のごとく

さも常識のごとく

私の母は言い切りました!!!


「お母さん、娘が人から避けられてもいいの!?」
「でも世の中、お母さんみたいな人ばっかりじゃないわよ。避けない人も中にはいるんじゃない?」





そういうのを少数派って言うんですよ!!





「娘が非行に走ったらお母さんのせいだからなー、
娘が登校拒否になったらお母さんのせいだからなー、
娘がサークル仲間から変な目で見られて仲間はずれにされたらお母さんのせいだからなー、
娘が登校途中で警察に『止まりなさい』って言われたらお母さんのせいだからなー!!!」




私は泣きそうになりながら早口でまくしたてると
脱兎のごとくチャリンコをこぎだしました。




前略、母上様
あなたをこんなに遠く感じたのは初めてでした。




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